ミニツアー

日本人プレーヤーが世界にはばたく手助けになれば

東香里ゴルフセンター 大東将啓 

 このツアーは、社団法人全日本ゴルフ練習場連盟と日本タイトリストからの後援を頂き、毎年1月に1ヶ月間フロリダのトミーアマーツアーに参戦しているものである。 今年で4回目になるフロリダ・ミニツアーに、全国から15名が参加した。 プロ、研修生、インストラクター、アマチュア、学生とその中味はバラエティーに富んだ集団ではあるが、アメリカ本場のミニツアーから何かを学ぼうという意識で一致した団体であった。 1月5日から2月4日迄の1ヵ月間に、3日間トーナメントを4試合、1日トーナメント4試合の合計8試合に出場した。

 

レベルが高いトミー・アーマー・ツアー
 トミー・アーマー・ツアーは、フロリダ州のオーランド周辺で、年間約150試合を開催している。 1週間に3日間が1試合と、1日トーナメントが2試合の割合である。 全米各地で行われているミニツアーの中でも、そのレベルが最も高く、毎年数人がクウォリファイングスクール(プロテスト)に合格している。 コースや天候によってスコアーが違ってくるが、3日間の優勝は、2桁アンダーといったところ。 ゴルフコースは、距離も長く、各ホールがウォーターハザードでセパレートされた所が多く、とてもタフだ。
 それに加え、風が強く、正確なボールコントロールを要求される。

明日のスタープレーヤーを夢みるラビット達
 プレーヤーの大半は、USPGAツアーを目指している、いわゆるラビットである。 野球の大リーグの登竜門としてのマイナーリーグが、ゴルフの場合このミニツアーなのだ。ゴルフは、実践を通して、試合に出て、はじめて上達するスポーツである。すなわち練習でいくら良いショットを打っていても、試合のプレッシャーの中で出来なければ意味ないのだ。 したがってラビット達の仕事は、試合に出ること。 そして少ないながらも、賞金を獲得し、その中で生活をたて、さらなる上のレベル(PGAツアー)に上がっていくことなのだ。

コンドミニアムでの1ヵ月にわたる共同生活
 宿泊先は、オーランド国際空港から車で約30分のシャドウベイというコンドミニアム。 ひとつのユニットに、ベットルームが3つ、バスルームが2つ、キッチン、リビングが付いている。 ここに4人で1組となり1ヵ月の共同生活を行う。 鍋、やかん、食器類等全てがそろっているので、食料品さえ揃えればすぐに自炊の生活ができる。
 洗濯機とドライヤーも付いている。 ゴルフコースへの移動は、4人1台の割合で借りたワゴンタイプのレンタカーを使う。 アメリカは、日本と違って右側通行で、最初のうちは戸惑う事もあるが、すぐに慣れてくる。

抜群のゴルフ環境
 ゴルフ上達のために重要なのは、練習の出来る環境、それを実践出来る環境(試合)、そしてレッスンを受ける環境が整っていることであろう。 その意味で、フロリダ州のオーランド周辺は理想的だ。 車で1時間以内に、100を越えるゴルフコースが点在している。 練習場でも芝の上からボールを打つことが出来るのだ。 マットの上からボールを打つのと、実際の芝から直接に練習するのでは、大変な違いがある。 リー・トレビノが、「日本人プレーヤーが世界で活躍出来ないのは、マットから練習しているから。」と言ったことは、良く知られている。 またアプローチ、バンカー、パッティング等のショートゲームの練習が出来る環境も整っている。
 第二の、実践出来る環境が、ミニツアーの存在だ。 実際に試合に出て、実践を通じてプレッシャーのなかで、ゴルフは上達する。 そのミニツアーの最高峰がトミー・アーマーツアーである。 特に冬場になれば、アメリカ北部やカナダからの選手が参加し、そのレベルは一層高くなる。 しかも、他のミニツアーと違い、オーランドを中心に約1時間の範囲で試合が開催されているので、1ヵ所に留まったままで、参戦が可能なのだ。 
 最後に、レッスンを受ける環境が整っているのも、オーランドの特徴のひとつ。 レッドベター・ゴルフアカデミーを初め、グランドサイプレス・アカデミー・オブ・ゴルフ、アーノルド・パーマー・ゴルフアカデミー、スイング・ザ・シングゴルフスクール等、アメリカで最も有名なゴルフスクールの本拠地がここにある。 ミニツアーの選手の大半は、自分のティーチングプロについて、レッスンを受けている。 ただやみくもに練習をし、試合に出るだけではなく、定期的にレッスンを受けることが重要なのだ。

上位3割に賞金
 ミニツアーの賞金の原資は、参加者からのエントリーフィーでまかなわれる。 成績上位者の約3割に賞金が還元されるのだ。 プレーヤーの目標はもちろん優勝であるが、悪くても自分の支払った金額位は、取り戻そうとする。 だからワンストロークの重みが大きく、真剣となる。 さすが、お金が関わると違うのだ。 このようなことは、PGAツアーでは、プロゴルファーとして当り前のことではあるのだが、ミニツアーの時からこのような意識でプレーをしているのであるから、強く、しぶといプレーヤーに自然と育っていく。 ある意味で、ラビットのほうが、ぎりぎりの生活がかかった中での戦いのため、よりスコアーにシビアになっている場合がある。

レッドベター・ゴルフアカデミーでレッスンを受ける
 レークノナ・ゴルフクラブ内にあるレッドベター・ゴルフアカデミーで、レッスンを受ける。 最初に練習場にてボールを打ち、スイングをビデオに収める。 次に教室に移動し、各々がスイングチェックを受けるのだ。 インストラクターは、ニック・ファルドを教えているパティー・マッカバンを中心に4人が担当した。 教室内でチェックした事を、もう一度練習場で色々な副教材や練習ドリルを使って、直していく。 最後に理想的なスイングをビデオに収めて、そのテープを持ち帰り、自分でチェックができるようにする。 教え方はいたってシンプルで、現状のスイングの認識と、矯正するポイントを明確にし、その為の最適な練習方法を教えてくれるのだ。 私の場合は、トップオブスイングでクラブヘッドがシャットフェースになり、そのまま降りてくればフックボールになるために、ダウンスイングでインサイドからヘッドが降りてくる傾向があった。 またフックボールが出るのが嫌なために、自然と体で調整し、インパクトで腰が開きぎみのスイングに知らず知らずなってきたのだ。 そこでバックスイングの途中とトップオブスイングでのクラブヘッドの向きをチェックして、スクウェアーにもっていけば、ダウンスイングでクラブの軌道を調整することなく、或いは腰を開くことなく、そのままクラブを降ろしても大丈夫なことを体で感じる事が出来た。 このことは、今まで何回も言われてきた事なのだが、改めてビデオテープでチェックを受け、テレビ画面の横のニック・ファルドのスイングと比較することにより、より明確に理解できた。

世界一のゴルフ展示会、PGAマーチャンダイズショー
 1月26日から29日まで、オーランドのコンベンションセンターに於いて、毎年恒例のPGAマーチャンダイズショーが開催された。 ゴルフに関する世界最大の展示会で、会場は端から端まで1キロ弱にもおよぶ巨大さである。 展示会だけではなく、ゴルフ業界の人々が全米を中心にオーランドに集まり、ミーティング、セミナー、役員会等も開催される。 今年は、モー・ノーマンが世界一のボールストライカーとして、タイトリト、ゴルフダイジェスト、ナチュラルゴルフのブース等で大きく紹介されていたのが印象的であった。 また会場外のゴルフ場でも、モー・ノーマンのデモンストレーションが開催され、プロ、ティーチングプロ、ゴルフ関係者を中心に多くの見学者が、打ち出されるショットの正確さに驚嘆していた。 どんなプロでもドローかフェードの持ち球があるものだが、モー・ノーマンの場合は、パイプライン・モーと呼ばれているが如く、左右の回転のない真のストレートボールであった。 66歳でありながら、ボールを打たせれば世界一と言われるゆえんが、自分で目にすることにより改めて納得できる。

日本人プレヤーの活躍
 1月29日、グレンリーフCCで開催されたトミー・アーマー・ツアーの1日トーナメントで、神山隆志選手が4アンダーで優勝した。 グレンリーフCCは、一昨年のクウォフイングスクールが開催され、7300ヤードを越える大変タフなコースである。 又その直後には、ノースフロリダPGAツアーにて森山慶一選手が、2日間トーナメントを4アンダーで優勝した。
 今までプロテストに通った日本人がミニツアーで優勝したことはあるが(伊沢利光プロ等)、日本のプロテストに合格していないラビット選手が優勝したのは、今回が初めてであろう。 その意味で、彼らの優勝は非常に価値があり、日本の研修生にとっても大きな励みとなることだろう。

今後の活躍を期待
 毎年のミニツアー参加者の中から、プロテストに合格しトーナメントで活躍する選手も出てきた。 またジュニアの全国試合に優勝し、ジャック・ニクラウス・ベストジュニアゴルファー賞を受賞した選手もいた。 或いは、日本人ラビットとしてミニツアーに優勝した選手もでた。 ツアー参戦後、一人でアメリカに残りラビット生活を続ける選手は、「アメリカでの1年間の経験や体験は、日本でいた頃の3〜5年分に相当する。」と言っている。
 最近では、雑誌、新聞等でミニツアーが紹介され、その存在が広く世間に知られてきた。 アメリカでの1ヵ月のツアー参加で、急に上達が望まれるものではないだろうが、参加者各位が何かを気付き、さらなるステップアップの手助けになれば幸いだ。 

 ゴルフに関して、国境はないはずである。 あるとすれば、自分の心の中にあるこだわりかもしれない。

 「求めよ、されば与えられる。 すでにドアは、開かれているのだから。」

 今後の日本人プレヤーの活躍を期待する。

HOME参加者からの体験談