太田 栄造のクラブフィッティング講座  第1回〜第10回

第10回 連載 2004/8/16

クラブフィッティング10

ロフトと重心の高さの関係について説明していきます。 フェース面で重心位置を測定していきますと、番手(ロフト)が増えるほど重心位置が高くなっていくことがわかります。これはショートアイアンのほうが一般的にロングアイアンよりもフェース面の上下の幅が広くなってくるからです。しかし適切に設計されたヘッドはネックのシャフトを装着するところ(ホーゼルボアーといいます)を接地面と垂直に固定しフェース面を目標に正しくスクエアに固定して測定すると、グラウンドライン(地面)からの重心位置の高さはほぼ一定の高さになります。デザインだけで設計してしまうと通常ロングアイアンのほうが重心位置が高くなりますので、非常に難しいクラブになる恐れがあります。重心位置を最適な場所に設定されるように設計することが非常に重要なのです。

この重心位置の高さはクラブのロフトとも密接に関連しています。実際にショットするとこのロフトのためにボールがフェース面にコンタクトする位置が番手ごとに変化してしまいます。9番アイアンと2番アイアンを例にとると、必ず9番アイアンのほうが2番アイアンよりも低い位置でボールをヒットしていることが理解できます。(図参照)

クラブのロフトが増えるほどボールをヒットする位置(コンタクトポイント)は低くなっていくわけです。そして必ずインパクトでボールがフェースに当たる場所はボールの重心位置よりも低くなります。ロフトが0度のクラブのみがボールの重心位置とフェースとのコンタクトポイントが一定になります。

以前にも説明しましたが、ナイスショットの条件はインパクトでクラブヘッドの重心の高さはボールの重心位置と同じか必ず低くなければなりません。一般的にはインパクトでボールが当たる場所にヘッドの重心位置はあればベストと考えがちですが、その必要はないのです。フェースとボールのコンタクトポイントよりもヘッドとボールの重心位置の関係のほうが実際のショットの際に重要だということを理解していただきたいのです。

フェース面の上下でのコンタクトポイントの説明をしてきましたが、上下だけではなく前後にもコンタクトポイントの違いが生じます。図でもわかりますが、ロフトが少ないクラブのほうが多いクラブよりも先にインパクトをむかえてしまいます。これは番手ごとに違う位置でインパクトするという結果になりますので、弾道に若干の影響が生じるケースがあります。これを修正してインパクトでのボールとのコンタクトポイントを一定にさせるために意図的にグースがつけられるわけです。ホーゼルオフセットとかフェースプログレッションとも説明されますが、つまりロングアイアンになるほどグースの度合いを増やしていけばコンタクトポイントが一定します。昔のクラブにはショートアイアンほどグースがきつくなるように設計されたクラブが多く存在していましたし、現在でもまだ使用されているゴルファーもおられるかもしれませんが、これは間違った設計のクラブだということを理解して下さい。ではなぜこのようなクラブが堂々と販売されていたのでしょうか。これは一般的にグース度がつくほどボールの飛び出し角度が低くなるためで、ロングアイアンほどボールを高く打ち出しやすくするために考えられたものと思います。しかしこのコンタクトポイントの理論が導入されてからはこのようなクラブは姿を消していきました。

今回は少し専門的な解説になってしまいました。なかなか理解しづらいかもしれませんが、クラブの機能に大きな影響を及ぼすことですのであえてこのコーナーで取り上げさせていただきました。

第9回 連載 2004/7/26

クラブフィッティング9

重心位置に関してはクラブのフェースアングルに影響を与えるものがあります。これはクラブをテーブルの上に置いてみることで判断が可能です。一般的なフェースアングルはソールしたときにフェースがフックやオープン気味になっていることをいいますが、このフェースアングルとは重心の深さに関係してきます。重心深度と雑誌などでは説明されていますが、アメリカなどではこのような表現方法ではなく、バックウェイティング(後重心)とかフォアーウェイティング(前重心)といわれます。フェース面から重心位置までの距離で表されますが、重心が深いヘッドほどテーブルに置いた場合フェース面が上を向くようになります。ではどちらのクラブを選択した方が良いのでしょうか?。これは一概には決められません。ゴルファーのパワーやスイングタイプによって決めるべきなのです。

もしロフト等、他のスペックが同じであれば重心深度が深いクラブのほうが若干ボールが上がりやすくなります。又、ヘッドがインパクトエリアでターンしやすくなりますので、スライサーの方にはより良い選択になるでしょう。この重心深度はフェースのバルジ(フェースのトウ側からヒール側についている水平方向の丸みのこと)に大きな影響を与えます。本格的な測定器がなくとも、このテーブル等に置いてみてフェースの傾きを見るだけで重心深度はある程度判断することが可能ですので、一度試されてはどうでしょうか。

普段スライスで悩んでおられるゴルファーはソールしたときのフェースアングルがフック気味で尚且つ重心深度の深いクラブを選択すると非常に良い結果がでる場合があります。

第8回 連載 2004/7/19

クラブフィッティング8

今回はクラブヘッドの重量調整による重心位置の変化について説明していきます。

大半のゴルフクラブのセットは、組み立てる際に若干の重量調整がされています。ヘッドをシャフトから抜いてみると分かりますが、シャフトの先端にバランス調整用のプラグ類や鉛がシャフトの中に接着されています。本来はヘッドに鉛等を貼って重量調整するのが最も一般的ですが、新品のセットには当然できませんのでやむなくシャフト内で調整するわけです。ではどうしてクラブメーカーはそのような方法を採用するのでしょうか?

これはセット内でヘッドバランスがあまり違ってしまうと消費者からクレームがつけられるからで、そうせざるを得なかったのはバランス計が普及して、ユーザーのチェックを恐れるからなのです。このバランスというのは一般のゴルファーには非常に馴染み深いスペックでよくCのいくらとかDのいくらとかで表現されます。皆様方も多分よくご存知の測定方法ですね。これは簡単に説明するとグリップ側から14インチのところを支点にしてヘッド側がどの程度重いかを測る方法で、以前は12インチ支点での測定器も存在していましたが現在では14インチで統一されています。CよりもDバランスの方が重く感じられます。

殆どのショップにこのバランス計は置いてありますが、個人で持っている方もたくさんいるようです。バランス計がなくても計算で求めることも可能です。

重量を加えてバランス調整する場合、もっとも適切な方法はヘッドの重心位置にできるだけ近い高さのところで、尚且つフェースセンターから等距離のところで重量調整することです。ところが一般的に行われているヘッドのホーゼル内部のシャフトの先端部分での重量調整は重心位置が重量を加えた方に移動する恐れがあります。この方法では加える重さの程度にもよりますがクラブの機能に影響がでてしまう場合があります。重心位置が大きく移動するほど重量調整を行ってしまいますと、通常飛距離が落ちたり弾道が低くなったりするケースもあるので注意が必要です。通常23gが許容範囲だと考えてください。

残念ながら組み立てられたクラブの場合見ただけでは判断できません。チェックするにはヘッドをシャフトから抜いてみないと判断できないのが問題です。簡単な方法は細くて硬いワイヤーをグリップエンドの穴から挿入して判断することもできます。この場合はシャフトの中に詰まっているものが接着剤なのか重量調整用の重りなのかは判断できません。

では何故このバランスに違いができるのでしょうか? 最近ではパーツの精度も非常に良くなってきていますが、どうしても若干の誤差ができてしまいます。ヘッドでも近年では軟鉄鍛造製でも±1gの精度でも製造できますがメッキの際に若干の重量誤差が生じます。又シャフトやグリップでも誤差がありますし、組み立てる際の接着剤の量やほんの少しの長さの違いでもバランスに大きく影響がでてしまうのです。通常約2g弱でスイングウエイトが1ポイント変化してしまいます。つまり完璧にバランスをあわせるということは、若干の重量調整の作業が避けられないということです。ここまでしてバランス調整をする必要があるのでしょうか? 結論はあまりシビアに考えることは無意味なのです。3ポイントぐらいのばらつきはスイングに大きな影響はありません。むしろ無理矢理バランスをあわせることによって、本来のクラブの機能に悪影響を及ぼすことのほうが多いのです。

現在ではクラブの総重量でフィッティングする手法がメインになりつつありますし、むしろバランスよりも重量のほうがスイングに大きな影響があるということがわかってきています。当社で以前にあったケースですが、あるゴルファーの方が相談に来られました。新しい米国の某メーカーのアイアンセットを購入されたのですが全く上手く打てないとのことで本人はシャフトがマッチしていないか、ロフトやライに問題があるのではないかと疑っておられていました。早速当社で預かってロフト、ライ、長さ、ソールバンス、バランス、重量、シャフトの硬さ、ファーストステップの場所やグリップエンドでのカウンターバランスの有無など調べましたが問題点は特にありません。最後にヘッドを抜いてみたところなんと多量の重量調整用の鉛が出てきました。ひどいものは10g以上もの重量調整がされていたのです。これではバランスはOKでもクラブの機能は全く無視されたも同然です。当社で全部のセットの重りを取り除き再度組み立てて、必要な重りはヘッドの裏に鉛テープを用いて調整したところ、見違えるようなショットになりました。これは極端なケースですが、不注意なホーゼル内での重量調整には注意が必要です。

第7回 連載 2004/6/28

クラブフィッティング7

最近のアイアンクラブは総じて低重心になっています。もちろん打ちやすさのためですが、それに加えて最近のクラブのロフトが立ってきていることにも影響しています。アイアンでも飛ぶクラブがよく売れるためこの手法はかなり以前より行われています。従来のクラブはただロフトを立てただけのケースが多く、その弊害がロングアイアンにきてしまいます。ただでさえボールを上げにくいうえによりロフトが減少するわけですから普通のゴルファーでは打つことができなくなります。通常ロフトのピッチは4度刻みですが、ロングアイアンは2−3度のピッチに設定されているケースが目立ちます。又ショートアイアンにおいても問題が生じてきます。ロフトを立てたためにPWのロフトまでも減少してしまいますのでやむなくAWなどをセットに加えなければならなくなりました。よくP/Sというクラブも目にしますがこれは和製英語のようなもので、米国ではLW(ロブウエッジ)とかUW(ユーティリティーウエッジ)などと呼ばれています。

最近のクラブは非常に上手く設計されています。キャビティーバックから進化して、ポケットキャビティーという形状が多く市場に出回っています。これはソール部分を厚くし、空洞部分をもうけたような構造です。この効果はなんでしょう? これは低重心化に加えて重心深度を大きくするためです。この重心深度とは一体何なんでしょう。従来のキャビティバックのクラブはヘッド重量を周辺に分散して配置し、ヘッドの慣性モーメントを増やす効果があります。これは英語でペリメーターウエイティングといって現在のヘッド設計の主流になっています。ではこのタイプのヘッドは打ちやすいんでしょうか。実はこれも設計によって大きく違いがでできてしまいます。このタイプのアイアンで最も有名な米国のP社のクラブは決して打ちやすいとはいえません。確かに慣性モーメントの増加によって方向性には効果的ではありますが、重量を上の部分にも配置するため以外と重心の高さが高く設定されてしまい、重心深度もほとんどフェース面に近いところに設定されてしまい、ある程度のヘッドスピードでダウンブロー(英語ではディセンディングアークと言います)にヒットしないとグッドショットは生まれないのです。しかし最近のクラブは大きな慣性モーメントを保ちながら十分な低重心化が図られています。

つまりよりウッドの特性に近づいているということなのです。その顕著な例が最近よく開発されている中空アイアンヘッド(ホローアイアン)です。この中空ヘッドの歴史は以外と古く米国で1984年後半に紹介されています。しかしこの頃のヘッドは軟鉄(炭素鋼)で製造されていたため強度の問題から現在のヘッドと比べると異様な形状で機能的にもそれほど目立ったものではなく、成功しなかったのです。しかし最近のヘッドは素材も進歩し強度のあるSUS630ステンレスなどで精密鋳造が可能ですので設計の自由度は飛躍的に増し、素晴らしい性能のヘッドが次々と発表されています。製法は簡単に言えばキャビティー部分に蓋をして溶接で仕上げる手法がメインで、重心深度も従来のヘッドより深く設定することが容易なため、設計によって上級者から初心者まで幅広く使えることが可能です。

又外観のデザインも一般ゴルファー向けの超低重心モデルから上級者向けのマッスルバック(フラットバックとも言います)タイプのようにもできます。これからのミドルからロングアイアンの主流になるかもしれません。

アイアンの重心位置(高さ)チャート

ソールからの重心の高さ           評価

16.5mm~17.5mm             現在最も低く非常に使い易い。

17.5mm~20.0mm             低重心モデルの代表。

20.0mm~21.5mm               一般的なモデルのタイプ

21.5mm~22.5mm             ちょっと難しくできれば避けたい。

22.5mm以上               使うべきではありません。

上の表はあくまでも一般的なゴルファーを基準にしたものです。上級者でヘッドスピードが速くダウンブローにヒットする場合は21.5mmぐらいでも問題なく使用できる場合がありますし、同じような場合でもスイープ(掃くように)にヒットするゴルファーの場合は21.0mmより高いクラブは使用しないほうがいいでしょう。   

第6回 連載 2004/6/14

クラブフィッティング6

前回はクラブの重心が低いほどアイアンやフェアウエイウッドの場合はショットしやすいと説明しましたが、今回はティーアップするショットの場合を説明します。

ティーショットの場合はティーの高さを自由に設定することが可能ですので、無理に重心位置を低くする必要はないように思われますが、実は今度は球の上げ易さとは別にバックスピン量に影響してきます。アイアンの場合はスピン量はある程度多いほうがボールに揚力がつきますので適しています。グリーンでよく止まる球は必ず弾道の高さとバックスピンが必要なのは当然です。もちろんバックスピン量が多すぎるとボールが吹け上がり、距離もでない不安定な弾道になりますので、各番手ごとの適切なスピン量が重要になります。

一般のゴルファーの場合、総じてアイアンのスピン量は不足気味で、ドライバーのスピン量が多すぎるという結果になっているようです。ではそのドライバーのスピン量を少なくするのはどうしたらよいのでしょう。これもヘッドの重心位置が大きく関係してきます。これを理解するには、ヘッドのギア効果という現象を考える必要があります。後ほど詳しく図で説明しますが、スピン量を抑えるためには重心位置より上でボールをヒットする必要が生じてきます。以前慣性モーメントの説明のところで少し説明しましたが、重心より上でインパクトするとヘッドは重心位置を中心に上を向くように回転しますが、このときにギア効果によってバックスピンを殺すように作用しスピン量が減少します。ヘッドには縦方向の丸み(ロール)がありその結果ヘッドの上のほうが、実質ロフトが増加していますし、尚且つヘッドが上を向くことでよりロフトが増大します。結果打ち出し角度が高くなりギア効果でスピンが減少しているため、現在考えられているもっともよく飛距離が出るといわれる、俗に言うドローンとした弾道になります。皆さんも経験があると思いますが、友人とプレーしたときに自分のほうがボールの初速が間違いなく速いし弾道もよく伸びていってるのに、友人の高い弾道のなんでもないようなショットのほうがよく飛んでいるといったケースです。もちろんその反対もあります。現在のクラブ開発はこの弾道を生み出すために設計されていると言っても過言ではありません。では重心位置が低いほどいいのかというと、これも問題で反対に低すぎるとバックスピン量が減少し過ぎドロップ気味の弾道になりキャリーが不十分になります。最低限のスピン量は空気による揚力を生み出すために必要なのです。反対に重心位置の下でインパクトするとどうなるのでしょう。

芯をはずす度合いにもよりますが、総じて当然のように弾道は低くなります。一般の人ならば若干スピン量が増加したとしてもキャリーが減少してしまいます。パワーのあるゴルファーですとスピン量が顕著に増えますので、低く打ち出されて高く舞い上がっていくような弾道になります。この弾道は見た目は迫力があってナイスショットのようですが、実際には以外と飛距離をロスしてしまいます。スピン量が多すぎるためボールの前進する力が上に舞い上がる力に食われてしまうからです。又スピン量の増加は空気抵抗の増加にもつながりますし、スピン量が多いほど減少するのも早くなります。つまり空高く舞い上がってスピンがなくなったときにストンと落ちるような弾道になりますので、風の影響も受けやすくなってしまうのです。

重心位置がクラブヘッドの性能に大きく影響していることがご理解いただけましたでしょうか。この重心位置はヘッド単体でないと測定できませんので、なかなか個人で測定することは困難ですが、測定方法はそんなに難しいものではありません。

フェアウエー上のボールとティーアップされたショットの違いを説明してきましたが、鋭い読者ならちょっとおかしなことに気付かれたと思います。今まで説明してきたことはスイートスポットをはずしてショットしたときのことばかりです。まるで芯で打ってはいけないような説明です。このスイートスポットとは限りなく小さな一点ですが、スポットをはずすといってもあくまでもスイートエリア内でのショットとご理解ください。このスイートエリアはヘッドの慣性モーメント値によって大きさが変わってきますが、総じて最近のクラブは大きくなっています。重心位置の上でヒットしたときにベストショットが出るといってもスイートエリアを大きく外れてヒットしてしまうと上記で説明した効果は変わりないのですが、反発係数が大きく減少してしまいますので、結果飛距離の増加にはつながりません。ベストはスイートスポットでインパクトしたときに最適の弾道が生まれるのがベストクラブということになりますが、真っ芯でヒットするケースはプロや上級者でも確率が意外に低いということをご理解ください。

参考までに、ヘッドスピードが45m(一般のゴルファーではロングヒッターになるでしょう)のゴルファーの最適バックスピン量は約20002500回転といわれています。もちろん正確には打ち出し角度やボールの初速によってこの最適値は変わります。 

重心位置の測定方法

第5回 連載 2004/5/31

クラブフィッティング5

前回クラブの重心位置慣性モーメントが重要だと説明しました。弾道に与える影響にはそのほかにロフト角、ライ角、クラブ長さなどいろいろ存在しますが、ヘッドの基本特性はほとんどこの2つの要素で決められてしまうといっても過言ではありません。この2つは互いに関連する要素でもありますが、今回は重心位置についてわかりやすく説明していきます。重心位置に関するスペックは3つに分類されます。@重心の高さ A重心の深さ

B重心距離(シャフト軸からの長さ)の3種類です。

同じような大きさで同じような形状のヘッドで、シャフトも同じなのにどうしてこんなに弾道が違うのだろうとか、なぜ打ちにくいクラブと打ちやすいクラブがあるのだろうと感じたことはありませんか? これはすべて重心位置に関係しています。ところが重心の場所なんて外から見ても全く判断がつきません。通常なにも細工せずに同じ体積でほぼ同じ形状のヘッドを設計したとしますと重心位置はほぼ同じところに設定されてしまいます。ここにヘッド設計のノウハウがあるわけです。つまりヘッド内部の構造に工夫をして最適な場所に重心位置を設定することが可能になります。

今回はこの重心位置の高さについて考えてみましょう。

一般的には高さが低いほど打ちやすくなると考えていただくのが正解です。この重心の高さはヘッド単体で考えても意味がなく、必ずボールとの関係を考慮する必要があります。つまり良いショットをするためにはインパクトでヘッドの重心位置がボールの重心位置とほぼ同じ高さか、低い場合にボールが上がりやすく距離も十分かせげます。ですからヘッド単体の重心高さの数値だけで比較しても意味がなく、ソールしたときの地面からヘッドの重心位置までの高さが重要になります。最近のフェアウエイウッドの形状が総じてシャローフェースになっているのはそのためです。実際重心位置を測定してみると、フェース面の真ん中より上に重心がある場合が多く見られます。ヘッド単体で考えると高い重心位置なんですが、ボールとの関係で見ると最適なところに設定されているわけです。ボールは球面体ですので材質が均一であれば必ず重心はド真ん中にありますので、実際にヘッドとボールとの関係を目で確認することができます。

それではシャローフェースのクラブであれば誰にでも使いやすいのでしょうか? 残念ながらそういうわけにはいきません。スイング時のクラブの入射角度とヘッドスピードで最適な重心位置の高さは変わってきてしまいます。パワーのあるゴルファーがダウンブローにショットしたとしますと、そのときボールにはどのような影響があるのでしょう。

ご存知のようにインパクトの瞬間ボールはつぶれますが、このつぶれている間ボールはフェース面をせり上がっていきます。つまりこれがバックスピンなのですが、このボールのつぶれる度合いが大きいほどヘッドに密着してフェース面をせり上がる時間が長くなります。そしてボールが復元し、より反発のエネルギーを得てフェースを離れるわけですが、そのボールがフェース面から離れるところにヘッド側の重心位置があると最大のパワーを引き出すことが可能になります。つまりボールを十分につぶすことのできるパワーの持ち主はより重心位置が高いヘッドが必要になってきます。又、パワーは同じでもヘッドの入射角度が急なゴルファーほどつまりダウンブローで打つ人ほど高い重心位置のヘッドが必要になります。この考え方はもちろんアイアンでも同様です。ここまでご理解いただけたでしょうか。フェアウエイウッドの選択でもただ単に人気モデルだから誰が使ってもOKとはいきません。ゴルファーのパワーやスイングの特徴などがわからなければ最適なクラブを選択することができないのです。それだけではなくボールの状態にも影響があります。夏の芝生の状態が良いときラフではときにボールが浮いた状態になる場合があります。みなさんも経験されたと思いますが、このようなときにシャローフェースのクラブで打ち込むようにショットするとだるま落としのようになり最悪の場合ボールの下をクラブが通り、ボールは下に落ちただけというような悲惨な結果になることがあります。まあこれはクラブのフィッティングの問題ではなく、スイングの問題ですのでインストラクターの方にその場合のショットの方法をぜひ教わることをお勧めします。

いままで述べてきたことはあくまでフェアーウエイにボールがある場合のことです。ティーアップするドライバーの場合は又違った作用が起こりますので次回はドライバーを取り上げて説明していきます。

第4回 連載 2004/5/17

クラブフィッティング4

今回はクラブヘッドのデザインについて説明していきます。

現在市場には多種多様のデザインのヘッドが開発され、ショップに陳列されています。  このデザインはただ単に外見だけではなく必ず理由があります。もちろん中には機能に関係なくデザインの変更だけでお茶を濁している商品も存在しますが、大半はそのデザインにするための理由が存在するのです。ウッド、アイアン共にヘッドの機能に影響を与えるデザインとは重心位置慣性モーメントの2つです。この2つの要素でほぼヘッドの性能が決定してしまいます。今回はこの重心位置について説明していきたいと思います。

この重心位置とは通常ヘッド単体についてのことで、商品として組上げられたクラブの場合はまた違ってきます。クラブになった場合はヘッドのみならずシャフトやグリップの重心位置も影響してきます。通常組み上げられたクラブの重心位置は43インチのドライバーの場合、ヘッドのソールから約12インチでシャフトの数インチ外側に重心位置が設定されます。つまり重心位置はクラブ本体ではなく外側の空間に存在するといった奇妙な現象が起きてしまうのです。たとえば金属のリング状の物質であればリングそのものではなくリングの中心に重心がくることになります。今回はヘッド単体の重心位置について説明していきます。通常ヘッドの設計においてはヘッド単体の重心位置の場所が非常に重視されています。ではなぜ重心位置はそんなに重要なのでしょう。これは物質はそれ自体の重心を中心に運動をするからです。ゴルフにおいては、スイングもクラブヘッドも必ず回転運動になるため重心位置が重要になるのです。多分スイングにおいても人間の身体の重心位置を中心に必ず回転運動がなされるはずですから、ゴルファーがスイングをする際にどこにスイングの重心位置があるかによって効率的なスイングが決定されるのではないでしょうか。身体の重心位置が動かなければその他の場所が動いてもスイングには影響しませんしもっとも遠心力を効率的に利用したスイングが完成されると思います。たとえば丹田部分に重心を置けば上半身は少々動いてもパワーロスにはなりませんし、極端な話、胸部付近にスイングの重心があれば腰や足が少々動いても理論上は問題ないのかもしれません。一般的には重心は下においたほうが身体の余分な動きを抑えよりパワーをヘッドに伝えられると思います。又、ゴルフスイングにも慣性モーメントが関係してきます。慣性モーメントの大きなスイングと小さなスイングとではボールの飛びに影響してくるはずですし、もっと研究する必要があるかもしれません。例えば慣性モーメントの大きなスイングはスイングアークも大きくなり、結果としてインパクトゾーンでのヘッドの回転運動が抑制されますのでたたきにいったり緊張した場面のショットでもミスが少なくなるでしょう。しかし反面飛距離をだすには不都合になります。慣性モーメントの小さいスイングの場合、ダウンスイングでのスイングアークが小さくなりますので、よりリストターンを有効に使うことができ、飛距離を出すには効果的です。しかし反面インパクトエリアでのヘッドのターンのスピードが速くなるため曲がりやすくなるはずです。このスイングの違いを見分けるにはフォロースルーで両手が左腰にあるときのヘッドの場所を見れば判断できます。慣性モーメントの大きなスイングの場合シャフトとヘッドはまだ目標方向を指していますが、小さなスイングの場合シャフトとヘッドは天を向いてしまっています。これはどちらが良いスイングかという問題ではなく、どのスイングがゴルファーにマッチするかということです。この重心位置や慣性モーメントのスイング理論はまだ存在しませんが、私の担当とは違いますので、この詳しい説明は大東氏にバトンタッチしたいと思います。

今回は少し話しが脱線してしまいましたが、上記で説明したことは今後のクラブのフィッティングの説明のときにも非常に重要なファクターになりますのですこし説明させていただきました。

次回からは本筋に戻って説明していきたいと思います。

第3回 連載 2004/5/3

クラブフィッティング3

今回はクラブヘッドのデザインについて説明していきます。

今や市場にはあらゆるタイプのヘッドが勢揃いしています。ヘッドの形状がショットに及ぼす影響は非常に大きなものです。デザインの違いはそれぞれ意味があるので、それを理解することはクラブ選びにきっと役にたつはずです。ゴルフクラブの機能を考えると、シャフトの働きも無視することはできませんが、まずヘッドの特性がゴルファーにマッチしていなければ、シャフト交換や長さ、バランス、グリップなどの調整を試みても無理が生じます。以前は初心者用から上級者用までクラブの種類は細かく分けられ、大手メーカーのカタログには数種類ものヘッドデザインが存在していました。しかし最近ではヘッドの設計手法も進化し、ロフトやシャフトや重量をマッチさせることで、アベレージゴルファーからプロゴルファーまでも同じヘッドが使えるようになってきました。一昔前の上級者用のクラブはいくらがんばってみても一般のゴルファーの手に負えるものではなかったのです。又、上級者やプロは難しいクラブを打ちこなしてこそ認められるといった風潮も存在していました。しかし現在では上級者でも自分にマッチした範囲でより打ち易いクラブを選択するようになってきました。プロでもバッグの中に昔のように1番や2番アイアンを見かけることは少なくなり、代わりに5番や7番ウッドあるいは最近流行のユーティリティークラブが入るようになってきています。これは決して最近の上級者の技術レベルが下がってきたということではなく、より良い結果を残すための結果なのです。

しかし市場で人気があるからといっても、すべてのレベルのゴルファーにマッチするゴルフクラブは存在しません。ここにクラブを購入する際のフィッティング技術が必要になってくるのです。ですから皆さんがゴルフ用具を購入する際は、この知識や技術の高いショップで購入されることをお勧めしますが、それを見分けるのはなかなか困難なことでもあります。最近の大型専門店などでは販売スタッフの教育が良くなされていて、用具の説明を求めると素晴らしい教科書的なセールストークが返ってきます。私などもときどき驚かされるほどです。しかしこれらの多くはメーカーなどの勉強会等で覚えた殆どカタログと同じ内容のことです。つまり彼らはメーカーに変わって宣伝しているわけです。これはこれで悪いとは思いませんし、お客様もセールストークに納得されて購入される場合もあります。しかし、カタログの宣伝文句や数値などは覚えてもそれほど役に立つとはおもえません。車を購入する場合でもカタログでエンジン性能、燃費、居住性などチェックしてから購入されるでしょう? これとおなじことでゴルフクラブを購入しようとされている方はある程度カタログなどで調べてからショップにでかける方が大半なのではないでしょうか。カタロクの数値は非常に重要なスペックですが、数値を覚えることよりも、その数値の意味を理解し、ゴルファーに理解しやすいように説明ができ、そして購入希望のゴルファーにマッチするかどうかを判断できないと意味がないのです。

多くのショップでは、接客態度や商品知識に重きを置いています。笑顔で接し、豊富な商品知識があれば、お客様も満足されるのは事実です。これはサービス業の基本中の基本ですが、これはゴルフの経験のない人でも入社後数ヶ月も訓練すれば立派に一人前になることができます。しかしゴルフショップはサービスだけを販売するのではありません。ゴルファーにより良いギアを販売するのが目的ですから、接客方法に加えてギアのプロとしてより深い知識を学ばなければなりません。しかしそれには長い時間がかかってしまいます。

ですから販売スタッフが頻繁に換わるようなショップはどうかと思います。皆さんも近くにゴルフ用具に関してなんでも相談でき又高いノウハウを持ったショップを見つけるとゴルフライフがかわってくるかもしれません。

前置きが長くなってしまいましたが、次回からは具体的な説明に入っていきたいと思います。

第2回 連載 2004/4/19  

クラブフィッティング2

これからクラブフィッティングの重要性について話していきたいと思います。

ゴルファーの皆さんがショップでクラブを購入される際、フィッティングのことを考えて購入されるケースはほとんどないと思います。しかし適切にフィットされたクラブは多くの場合ゴルフゲームに素晴らしい効果を発揮します。ときには劇的な変化をもたらすケースも存在します。しかしこのフィッティング作業というのは本当に困難で、又そのためのアプローチの方法も多種多様です。ご理解いただきたいのは、最適なフィッティング効果を得るためには、クラブフィッティングの問題とスイングの問題の両方を解決するための高度な知識が必要だということです。

多分全体の80~90%のゴルファーはクラブのフィッティングの重要性を理解されていないのではないでしょうか。今やクラブのカタログに目をとおすとあらゆる情報があふれています。ヘッドの素材、ロフト、ライ、重量、慣性モーメント値、重心位置、シャフトのスペック、その他もろもろ。メーカーはどうしても自社の製品の優位性を謳いたいためにいろいろと説明がなされています。このような情報は現在のゴルファーは技量の優劣にあまり関係なくよくご存知です。時にはお客様の中には各種スペックを指定して購入される場合もあります。ゴルフクラブの各パーツのスペックはもちろん重要なのは間違いないのですが、スペックを知るのと、フィッティングとは全く別のものであると考えてください。

当社でも通常フィッティング作業には最低でも2時間以上は費やされてしまいます。アメリカのショップなどでは4~5時間かけておこなうのが常識なのです。

一般的には上級者ほど作業が楽になります。上級者ほど自分にマッチしたクラブの情報をたくさんもっていますし、又フィッティングの結果がすぐに確認できるからです。しかし最も大きな理由は上級者ほどボールを安定してショットすることができるため、ボールの飛びの変化がわかりやすいからなのです。

それではここでいう上級者とはどのようなゴルファーのことかを考えてみましょう。

安定してクラブフェースの中心近くでボールをヒットできる。

スイング中にクラブヘッドの軌道(スイングプレーン)とクラブフェースの角度のコントロールができる。

上から下への軌道(ディセンディングアークで英語ではダウンブローとは表現しないようです)の中でクラブヘッドの重心位置の近くでボールをヒットすることができ、尚且つヘッドの重心位置とボールの重心位置が等しいか、それよりも低い場所でボールをヒットできる。

インパクトに向けてヘッドを加速しながらボールをヒットできる。

5.一般的に練習量が多く、ショットにより自信がある。

以上が我々が考える上級者の定義のようなものです。もちろんもっと多くのケースも考えられますが、これはスイングのレッスンやクラブフィッティングを行う者からみた場合の上級者のイメージと理解してください。

それでは我々が皆様に提供しようとしているクラブフィッティングとスイングレッスンの最終目的とは何でしょう。これはたった一つで、スクエアにボールをヒットすることなのです。この目標を達成するためにあらゆる種類のフィッティングやレッスンが存在するのです。このスクエアにボールをヒットする効果とは、最大限の飛距離と安定した方向性を得ることができることです。

それではスクエアにヒットすることによる効果とは、

ボールに最大限のエネルギーを伝えることができ、飛距離が伸びる。

サイドスピン量が減少し、よりストレートなショットが可能になる。

クラブの番手ごとに最適なバックスピンを得ることができ、特にアイアンではよりグリーン上でのコントロールが可能になる。

より素晴らしいインパクトのフィーリングが得られる。(英語ではこのフィーリングのことをソリッドフィールと言いますので本文中でも使用させていただきます)

    ではインパクトでスクエアにヒットするための要因とは、

クラブヘッドの軌道(アウトサイドインかスクエアかインサイドアウトか)

クラブフェースアングル(オープンかスクエアかクローズか)

クラブヘッドのスピード(加速しながらか減速しているのか、又速いか遅いか)

インパクトするときのスイング角度(上から下への軌道かどうか)

フェースのどの部分でヒットしているか(先かセンターかヒールか)

     ではスクエアにヒットするためにフィッティングに要求されることは、

クラブフェースアングル(フックフェースかスクエアかオープンフェースか)

ライ角度

ロフト角度

クラブヘッドの重心位置

シャフトのフレックス、材質、重量及びフレックスポイント(キックポイント)

クラブの長さ

スイングウエートとトータルウエート

グリップサイズ

     などが考えられます。 

第1回 連載 2004/4/5  

今回よりゴルフクラブのノウハウやフィッティングの分野を担当させていただくことになりました。

できるだけわかりやすく説明していきたいと思っています。ゴルファー自身も技量の優劣に関係なく、

ある程度クラブに対する知識があったほうが良いのは当然です。

ゴルフショップでクラブを物色していても、ショップ側はなんとか買ってもらおうと

一生懸命セールストークをしてきます。このクラブであればよく飛んで曲がらないと

いったまるで魔法の杖のような説明をしてくることもあります。

専門的な用語を使われても理解するのは一般のゴルファーにはなかなか困難です。

理解していただきたいのは万人にフィットするクラブは存在しないことです。

ゴルフゲームの上達のためには次の5つのステップがあります。

 

1.プロフェッショナル スイング インストラクション(正しいレッスン)

2.適切なクオリティーとフィットされた用具(とくにゴルフクラブ)

3.練習(練習方法も重要です)

4.実際のラウンド

5.メンタルトレーニングでとくにポジティブ アティチュード(前向きの姿勢)

以上の5つが非常に大切なのです。

 

米国のスクールではスイングのレッスンと平行して必ずクラブのフィッティングが

おこなわれます。せっかく苦労して習得した良いスイングをしてもクラブが

フィットしていなくて良いショットができなければ努力も水の泡です。

そんなことのないようにこれから皆さんに正しい情報をお伝えしようと思いますのでご期待ください。

 

最近では修理や組み立てに使う工具類などが簡単に入手することができるようになり、

少しの知識さえあれば自分でトライすることができます。シャフト交換でも1時間程教えてもらえば

最低限の工具さえあれば誰にでも可能です。そのためか簡単な工房を備えたショップが増えてきました。

これはこれで結構なことなんですが、問題はお客様に良い商品を提供したり、アフターサービスを

充実させるためならばいざしらず、多くは景気が悪く物販のみでは利益が得られずとりあえず工房を構えて

利益を得ようとするケースが多いのではないでしょうか。十分な技術力のないショップで

クラブを調整・修理してもらうことは問題が多々発生します。特に最近のクラブは修理等が

困難になってきています。シャフトの先端径でも.350インチのみならず.365インチ、.410インチなどもあり、

それぞれに特殊なパーツが必要になります。又、ピンのISIクラブのように独特の形状をした

インナーホーゼルフェラルもあります。絶えず最新の情報を勉強していないと最近のクラブは手をつけること

ができません。それと最も重要な分野はクラブフィッティングです。単にヘッドスピードだけをみて、

ヘッドやシャフトを容易に選択することは危険です。かなりのハイレベルのクラブ機能とスイングのノウハウが

ないと難しいことをご理解ください。ただ残念なことは、日本ではそれに対応する文献類がほとんどないことです。

アメリカではその類の教科書が多数販売されています。特にゴルフクラブの修理やフィッティングの分野では

カリスマ的存在であるゴルフワークス社のラルフモルトビー氏の「ゴルフクラブフィッティングプラン」

という本の内容の詳細さには驚かされました。クラブ設計に携わっている方でもこの本は非常に参考になるものです。

 

今後はこの本の内容に添って沿ってクラブ機能の解説をしていきたいと思っています。

ただここまで詳しい情報を入手すると、それをいかにうまく実際のフィッティングに取り入れるかは難しいものです。

情報が増えれば増えるほど頭が混乱してきますし、どの方法が良いのかわけがわからなくなってしまいます。

私自身も情報を整理し何とか確立した独自のフィッティングシステムを立ち上げたいと思っています。

何か質問があれば遠慮なくお問い合わせください。微力ではありますが私の知識がお役にたてば幸いです。

次回をお楽しみに。

 

ゴルフシティ

太田 栄造