第2回:ゴルフは待つことを知らなければならない

ム・カイトは、ベン・クレンショーと同じホームタウン(テキサス州オースチン)に育った。クレンショーはカイトより2歳ほど若いが、少年時代は、クレンショーのほうがほとんどのトーナメントに勝っていた。

 カイトは、クレンショーに対してジェラシーを感じるのではなく、自分の望みをより高める手段として彼の存在を使った。カイトは語っている。

 「世界で一番素晴らしいことだったのは、ベンが少年時代にいつも私を負かしたことだった。私自身がプレーするためには、より上に向かって進むしかなかったのだ。ベンは私の人生のドライビングフォース(原動力)なんだ」

 しかし、カイトのように考えることができる人間はまれである。ほとんどの場合は、同じ町のライバルに勝つことができないのに、どうしてツアープレーヤーになることができるんだろうか、と疑問を抱き、あきらめてしまう。だが彼は違った。

 「私はグレードプレーヤーになりたい。グレードプレーヤーになるんだ。たとえそれが12歳のときでも、30あるいは40歳のときでもいいんだ。とにかく、このゴルフゲームを習得するんだ」

 カイトはそんな決意を心の中に持ち続けていた。
 われわれはよくペイシェント(忍耐)について話し合う。もう10年以上も耳にたこができるくらいに。ゴルフゲームは、ペイシェントがまずもって必要なのだ。私がいつもカイトにいうのは、

 「もし、グレードプレーヤーになりたいのであれば、待つことを知らなければいけない」

 ということである。
 ゴルフゲームは、ディシプリン(訓練) とペイシェントの両方を鍛錬する厳しさと、我慢強く待つ態度が大事なのだ。ペイシェントとは、自分が勝つことや、カップに向かっていったボールがカップインするかカップに蹴られるか、その分からないものをただ待つことなのである。
 もし、プレーヤーに待つ努力がなければ、毎ホールピンに向かって攻め、無理なパットをして結局3パットしたりする。だから待つ必要がある。

 カイトの場合、初めて全米オープンに勝つまで実に22回も挑戦し続けたのだ。毎回、いつかは自分が優勝することを信じて戦い、一度も勝つことができなければ、ほとんどの人はあきらめてしまうはず。多くの人は出場することに満足し、参加したことを喜び、勝てなくてもそれでいいと認めてしまうだろう。そのような態度であれば、成績はおのずと中くらいで終わってしまうものなのである。