第10回:ゴルフは自分の内側の恐れと心配の戦いなのだ

ルフに限らず、専門家は外部だけを見て判断して、選手に対してタレント(天性)があるとかないとかをいう。しかし、重要なのは、自分の内側を自分で見つめて、他人にないものを掘り起こし、育てていくことだ。

 トム・カイト、ニック・プライス、ブラッド・ファクソン、パット・ブラッドレーは、強いハートを持っている。強いガッツとソウル(魂)とスピリット(精神)を体の内側に秘めている。しかし、残念なことに、どれくらいの分量のハートがあるとか、ガッツ、ソウル、スピリットはどうであるとかは私には分からない。また、それが体をどのように動かし、どれくらいの原動力になっているかも分からない。なぜなら、それらは、目で見ることができないから。

 ゴルフスイングとは違って、写真やビデオテープを使って、ガッツや体の内側、マウンドがいかにターゲットに向いているかを映し出すことができないからだ。自分の内側を見つめられるのは自分以外にいないのだ。

 だれでもある程度は失敗することを恐れている。すべてのエネルギーを、トッププレーヤーになるために注いでいるにもかかわらず、一方で「もし予選を通過しなければ、どうしよう」と考えてしまうのだ。ゴルフゲームは恐れと心配との戦いなのだ。ギブアップするか、前進するか、体の内側で戦いが行われているのだ。

 トップになりたいのであれば、まず自分の内側を見つめなければならない。そして、どのようにして自分を信じるかを学ばなければならない。スポーツ心理学では、『自分がよい考えをすることができる能力があることを認めること』からまず始める。
 ただしこれは、非常に大きなパワーが必要になる。

 人間は、誰でも悪い考え方(否定的に物事を見ること)をすることが可能だからだ。恐れの中に閉じこもることもできる。心配がある心の状態であれば明確な決定はできない。自分がダメだと思ってしまえば、タフな精神を持つことが不可能になる。プレーをしていて、最後のスコアを考えてしまえば、現実のプレーに集中することはできない。

 これらはすべて、フリーウィル(自由な意思の選択)なのだ。
 自分でどちらの心の状態になるかを選んでいるのだ。

 必要なことをするのか、したいことをするのか。あるいは何かを心配しているのか。

 私がプレーヤーに望むのは、毎日毎日よいムードをキープし、何の心配も持たない状態を、ずっと続けることなのである。