第29回:残りホールとスコアの計算はタブーだ

いスコアを出したいのであれば、理想的にはプレーが終わるまで自分のスコアを知らないことがベストだ。ゴルフの最終目的は、少ない打数でプレーすることである。しかし、スコアをつけるゲームであることと、ラウンド中にスコアの足し算をすることは大きく違う。

 私はプレーヤーに対しては、ラウンド中にスコアを足し算することは勧めない。1球1球プレーをして、ラウンド終了後に計算することを勧める。例えば残りが3ホールで、全部パーでいかないと80台で回れないとか、ボギーでいかないと100が切れないとか、その時点で考えることは、自分自身に不必要なプレッシャーをかけ、集中力を欠く原因になるだけである。これは、トーナメントプレーヤ-についても同じことだ。

 このことは、ジャック・ニクラスのキャディのアンジェロが本に書いている。ニクラスがアンジェロにいったことは、「土曜日と日曜日に、トーナメントでプレーしているときは、私がその時点でどの順位にいるかは絶対にいうな」であった。ニクラス自身、自分の順位を知りたくなかったのだ。順位を考えてプレーするよりも、ただ単に1球ずつ集中してプレーに専念するほうが、どれほど冷静なプレーがしやすいであろうかということを考えてみてほしい。1球1球に集中し、全米オープンに優勝するかは考えず、ただゴルフをプレ-するだけ。それで結果として全米オープンチャンピオンになれたなら、素晴らしいことである。しかし、チャンピオンになることばかりを考えていては、プレーに集中することはできない。

 私がいつもプレーヤーにアドバイスしていることは、「コースを攻める戦略は、スタ-ト前に頭に入れておくべきだ」ということである。自分で最良の攻め方を組み立てて、たとえ他のプレーヤーがどうであれ、それに最後まで徹するのだ。冷静でいるときに、はっきりとした自分のプランを立てることが重要なのだ。そして、自分のプランを信じて、それをコースで実践するのだ。自分のストラテジー(戦略)を最後の3ホールで変えたところで、スコアが縮まるわけではないのである。最終ホールがパー5で、2オンを狙っていく場合は変わるかもしれないが、最終ホールがパー5で、しかも優勝を争っている場面に出くわすことは、そんなにあるものではない。