羽間鋭雄教授による「ゴルフのための手入れ」−ストレッチと歪みの矯正−

4月18日にゴルフホームドクターの合同練習会に「ゴルフのための体の手入れ」と題して大阪市立大学体育学研究室の羽間悦雄教授に来場していただき、実践を行った。当日は実際のストレッチや体の歪みの矯正法等の実演を交えて大変参考になったものであった。

毎日少しの手当てで効果絶大!

羽間先生の話によると「ゴルファーに限らず誰でも日常の生活の中で、偏った動きの中から体の歪みが生じている。それは「埃」のようなもので、毎日の手入れを少しすれば矯正されるもので、そのままの状態で放置すれば、なかなか取れない「汚れ」となってしまう危険性がある」とのことだ。だからこそ毎日少しの体の手入れが大切になる。ちょうどプロゴルファーが整理体操を兼ねて、逆向きでスイングするのは、一方方向だけの動きのスイング練習を重ねることで、体に対する一定箇所の負担が大きくなる歪みを矯正する役割がある為なのだ。

背中が命の輸送路!

人間の細胞は60兆あると言われている。最初の細胞は「全能性」といって何の機能にでもなりうるものだが、一旦、その役割が決まればその機能が確定する。その中で「脳」には140億の細胞があり、ゴルファーに対してゴルフスイングをする運動命令を携わっているのだ。大脳が指令を行い、その反応を小脳でフードバックを受け取り、疎通が繰り返され「回路」が出来る。

一般に細胞は20から24歳がピークで、そこから老化するが、脳細胞だけは別である。すなわち使えば使うほど老化せずに「発電」しているのだ。ほとんどの運動命令は脊髄に入り、神経を通じて体に行く。したがって「脊柱の歪み」は全ての病気のもととも言える。

近代医学の限られた部分!

現代医学は、数値化された所見の元で薬と処方をするのがほとんどのところだ。

すなわち、お医者さんに行って、血液検査等を行い、その数値の元で処方箋を出す。「機械と薬屋」の医療と言っても良いだろう。そこには医者の存在意義さえもない等しい。自分の五感に伴う診療が乏しいのが現状である。また薬害も大きな問題になって来ている。そんなんかオステオパシー(http://www.joa-jco.com/whatost.html)やカイロプラティック等の代替医療が着目されてきたのは、今から100年以上前のアメリカに於いてのことだ。日本にいても古くから針灸等の代替医療が行われており、広がり難い数値化できない治療が、野口整体協会などで普遍化する努力がなされてきた。

骨格の歪みを知ろう!

骨は筋肉で繋がっている。その筋肉が出す「痛み」危険信号なのだ。その歪みを手入れすることは、自分で出来ることが多い。まずは自分の状態「歪み」を知ることからはじめよう。知ると知らないはゼロと100。大きな違いがある。そのスタートは筋肉の「囁き」に耳を向けること。筋肉はエネルギーを持ち、そこには心がある。体全体のバランスが大切。人間は2本足で立つようになり、歪みが生じだ。4本足の時は、バランスよく生活できた。2本になって、手を使うようになり左右均等でなくなったためだ。あちこちに不均等が運動の結果、生まれてきた。でも生命体は、独自に元に戻ろうとする機能がある。例えばテニスプレーヤーを考えて見よう。右手ばかりでストロークをしているが、反対の腕の2倍の大きさにはならない。しかし、右腕は左腕よりもある程度太くなるのは防げない。その日の歪みや癖はその日で手当てし取り除くのが理想的だ。毎日やれば埃を取るように簡単な作業で取り除くことが出来る。

チャンピオンシップスポーツはクーリングダウンが大切!

チャンピオンシップスポーツと言われる競技思考のトレーニングでは、体をいじめて壊れるまでやることも多い。その結果「痛み」という筋肉のメッセージが現れる。トレーニングの目的は、100%の運動能力を105%や110%と、それ以上のにすることだ。決して自分の能力の50%でトレーニングをしていたのでは、実現しない。NFLの選手は、その日の内に明日のトレーニングのためのクーリングダウンを十分に行うことをしている。その理由は、次の日のトレーニングを100%の状態で向かえることが出来るようにしている。次の日の準備体操を、前日に行っていることだ。

技術練習だけではダメ!

ゴルフの場合、スイング練習を中心に行うことは確かに必要となる。なぜなら日頃使わない体の動きを、実際にボールを打つことにより、大脳と小脳を使って新しい運動回路を作る作業をしている。技術習得のための打球練習をより効果的に行うためにもフィジカルトレーニングは欠かせない。またメンタルの部分も同様となろう。タイガー・ウッズが技術面のティーチングプロだけではなく、フィジカルのトレーナーや栄養学士、セラピスト、メンタルトレーナー等のスタッフがチームで支えている点からも、上記のことが伺われる。また体を鍛えるだけでなく心の調整も重要となる。そのポイントが「呼吸」であろう。そのためにまず意識をして呼吸することをお勧めする。

心の緊張を呼吸で解決!

緊張した場面で、心に意識を向けてプレッシャーを取り除くことは難しい。だが呼吸に意識を向けて、コントロールをすることは可能だ。緊張状態では呼吸が「浅く」そして「速く」なりがちとなる。そこで「深く」「ゆっくり」と意識をして「息」をしてみよう。そのときに「吐く」ことに意識を向ける。しかも胸で息をせずに、お腹を使って大きく長い息をすることだ。文字通り「長生き」は「長息」からうまれる。そうすると緊張も緩和することが出来よう。ヨガや気孔などは、そのためには良い修行となる。

股関節のインナーマッスルをストレッチしよう!

2本足で歩行する人間の運動の要となるのが「股関節」。股関節には23の筋肉があり6つの動きを可能としている。これらの23の筋肉は動かすためのものと、固定筋と2種類ある。特にインナーマッスルを伸ばすためには、時間を掛けてストレッチをする必要がある。まず自分自身でやってみて、体でわかることが大切だ。目安は1つの動作で15〜20分。よくストレッチで「15秒静止」などと言われるが、それではアウターマッスルしか伸ばせない。ポイントは「快」。気持ちが良い所を見つける。少し痛くて気持ちよい「イタキモ」とでも言おうか。何もストレッチだけに時間を使うのではなく、テレビを見ながら新聞を読みながら同時にストレッチを行うのだ。毎日習慣付けて、止められなくなるだろう。

歪みのチェックと矯正方!

まず整体でチェックする。うつ伏せになり脱力して足を伸ばす。膝から折り曲げお知りに踵が付くようにする。どちらが曲がりやすいかをチェックする。矯正方法としては、「易」「難」で逆をするわけだ。すなわち1.曲げやすい方を曲げる。2.曲げ難い方を伸ばす。3.曲げやすい方を曲げて、緊張させて、瞬間脱力する。その後、もう一度膝を曲げれば、曲がりやすくなることがチック出来る!

五感でも「快」と「不快」がある。視覚、臭覚、聴覚、味覚、触覚は、ともかく「快」をすれば良いのだ。

橋本敬三先生の操作法!

「毎日の性格のありよう、息・食・動・想・環境の全てがリンクしている。

動きやすい方に動きなさい。水中で動くようにゆったり」体操には、型があるが、その目的を認識することからはじめよう。例えば「肩回し」をしましょう。皆さん、肘が肩から下で肩回しをしている。これでは肩回しの意味がない。肩回しの目的は、日頃動いていない状態まで肩甲骨を稼動させること。すなわち肘が頭の上から背中の後まで稼動領域の限界まで回すことだ。日常の生活の中で肘を肩以上に上げてことがあるだろうか。ほとんどないはずだ。だから50肩、40肩になるのだ。だから肩回しをして日常使わないところまで動かす必要がある。目的を把握するのは「お茶」「お花」も同じこと。「型」から入っても、やはり作法の目的、心を知ることにより、そのしぐさが本物となる。ゴルフにおいても最初は形から入るだろうが、最終的には目的、(目標意識とも言える)を知ることにより本物なる。

ストレッチの種類!

ストレッチには、1.Static Stretch 2.Dynamic Stretch 3.Ballistic Stretch

がある。1.は反動をつけずに、動きを止めた状態で行う。2.3.に関しては、反動や他の力を借りて行うものだ。弾力を使えば伸張反射がおこり、筋肉を伸ばすどころか、反対に縮めることとなる。したがってインナーマッスルまで伸ばすためには、1.のスタテッィックの動作が有効となる。この時の注意点は、動作の時に息を吐くことだ。しかも「深い」「ゆっくり」とした息を。そして筋肉からのメッセージに耳を傾けてみよう。そこには心のメッセージがあるかもしれない。

たかがストレッチだが、されどストレッチでもある。

<<真向方>>(まっこうほう)

 

昭和初期に、長井津氏が、脳溢血による半身不随を克服された自らの体験のもとに提唱されたこの体操は、簡単な4動作を正確に行うことによって、健康にとって素晴らしい効果をもたらすことが実証されています。

 

@図A図B図

 

@ 両足かかとをそろえ、足の裏をなるべく上に向けるように座る。背筋をピンと伸ばし前方を見つめる。

A 静かに息を吐きながら、背筋を曲げないように上体を前に倒していく。

B ひざやももをなるべく床と平行にし、胸、頭を床につけるようにする。息は吐ききる。

 

@図A図B図 

 

@ 両膝を曲げずに両足をそろえ、前に投げ出して座る。上半身と下半身はL字となる。そのとき足首は出来るだけ鋭角に

A 両手で足の裏を持ち、静かに息を吐きながら、ボートをこぐように感じで、上体を前に傾けていく。無理をしないで曲がるところまで

B 上半身がピタリと、下半身に二つ折りに重なれば完全。両膝、腰が曲がらないように

@図A図B図 

@ 両足をできるだけ左右に開く(150度が理想)足首に力を入れ足先をピンと立て、腰も立てる。ひざは曲げない

A 背筋を曲げないように、静かに息を吐きながら、上体を前に傾けていく。

B そのまま腰、胸、額が床につけば申し分なし。ひざは最後まで曲げず、背筋も伸ばしたまま。

@図A図B図 (協力:BCルーム 妻屋 公三)

@ 背筋を伸ばして正座する。足をおしりの幅だけ開き、そこにおしりをおちつける。

A 手を後ろにつきながら、上半身を静かに後ろへ倒していく。

B 手を真っすぐ上に伸ばし、できれば背中全体を床につける。約1分間、全身の力を抜き、静かに呼吸を整える。このとき足を開かないように。

 

 

  プロフィ−ル

羽間 鋭雄(はざま としお)   

                    昭和17年 生

大阪市立大学 体育学研究室  教授・博士(医学)

兵庫県立 神戸高校 卒

東京教育大学(現筑波大学)体育学部 卒業

関西鍼灸専門学校 卒業  鍼師、灸師 免許取得

スタンフォード大学 医学部 予防医学研究所 客員研究員

(’90〜 ’91)

日本ゴルフ学会 代議員、日本ゴルフ学会近畿支部会 会長、

大阪体育学会 理事長、日本教育医学会 理事

日本体育学会、日本体力医学会、日本生理人類学会、日本ベジタリアン学会 

(財)フィットネス21事業団 各 評議員

(財)大阪クナイプ協会 理事、 スパイラルテ−ピング協会 顧問

厚生労働省認定  健康運動指導士、健康測定医  養成講習会 講師

文部科学省認定  公認コ−チ 養成講習会 講師 など

 鍼灸、整体、心身のあらゆる症状をを筋肉の調整によって解決しようとするアプライド キネシオロジイおよび、体は心(意識)を表すものであるとする心身一如の生命観に立つ身体心理療法の習得など、健康に関わる様々な研究と実践から、全体論的健康学の確立を目指す一方、ゴルフ学会の要職にあり、ゴルフの科学的研究とともに、運動障害の予防と改善法の開発を進めている。